【参考】

地理情報システムに対しては、さまざまな定義が与えられてきた。例えばAronoff 1)は「地理的な位置参照が可能なデータを管理し、操作するための、マニュアルまたはコンピュータ化された手続きの集合」と定義した。建設省GIS研究会2)は、「地図データを電子情報化することにより、様々な統計データ等と地図とを容易に対照することができるようにするものであり、空間的な検索、解析、表示などの機能を有するものである。」とし、DoE 1)は「地球上の空間的な位置参照ができるデータを取得し、管理し、チェックし、操作し、解析し、表示するための体系」としている。

 第一の定義は他と比較し、多少限定的であり、データの取得と表示、つまりinputとoutputが省かれている。第二の定義は、地図データと統計データという特定のデータ間の結び付きに重点を置いているきらいがあり、包括的な定義にはなっていないと考えられる。これに対し第三の定義は、地理的な位置参照が可能なデータを入力し、処理し、意味のある情報を出力するということが説明されており、地理的データの情報処理システムとして完備した定義になっている。ただし、「地球上の」という但し書きは、地表に範囲を限定しているきらいがある。また、データのチェックは重要な機能ではあるが、取得の中に含まれるべきである。そこで、ここでは3番目のものをおおむね支持し、以下のような定義を提案する。

 

 「地理情報システムとは、その位置が特定できる実世界の存在を、ディジタルデータとして抽象化し、管理し、検索し、加工し、意味のある情報を出力する体系。」

 

地理情報システムと他の情報システムの大きな違いは、取り扱う情報が「その位置が特定できる実世界の存在」を対象とすることである。そのような存在としては、道路、鉄道、建物、橋、森林といった目に見えるものもあるが、行政界、用途地域といった、現地では目にすることが出来ないものもある。また、過去の記録や未来の計画の中にしか見られないものも、関係する人間が「存在」に対する共通の認識を持っていれば、地理情報システムで扱う対象になる。

 

1. Geographic Information Systems, David J Magure, Michael F Goodchild, David W Rhind, Longman Scientific & Technical, 1991

2. 建設省GIS研究会第2次報告−情報ハイウェイ時代にふさわしい社会を目指して, 1996.5.31

 

なお,上記の文章は,

太田守重,大沢裕,連載講座GIS入門(1),雑誌「トンネルと地下」土木工学社,1997.1

に掲載されたもの(部分)です.

 


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