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第27話 ユビキタス?

                                   
水田課長だんだん寒くなってきたな。こういう寒いときは鍋か炊き込みご飯にかぎるな。
安村主任鍋はともかくとして、炊き込みご飯ですかぁ?
水田課長炊きたての炊き込みご飯を、フーフーしながら食べるっていいじゃないか。今日も妻に晩メシは炊き込みご飯とリクエストしたんだ。ところがだ・・・
中山由美どうしたんですか?奥様に断られたのですか?
水田課長いや、妻はOKなんだけど、電車の車掌がなあ・・・
中山由美どうして電車の車掌さんが出てくるんですか?
水田課長車内アナウンスで炊き込みご飯はおやめくださいって言うんだ。
中山由美そんなこと言うわけないじゃないですか。
水田課長だって、そう聞こえたんだもん。
安村主任駆け込み乗車はおやめくださいって言ったんじゃないんですか?
水田課長あっ、そうか!
安村主任ずいぶんな聞き間違いですね。炊き込みご飯のことばかり考えてるからですよ。
水田課長がはは、ところで、炊き込みご飯って野菜や肉がごはんの中に遍在してるよな。こういうのをユビキタス環境という。
安村主任また、どこかで聞きかじったような知識を・・・・。確かに遍在しているのがユビキタスですが、炊き込みご飯にたとえるのはいかがなものかと。
中山由美もう少し、スケールの大きな話をしましょうよ。
水田課長へ? 地球規模? 宇宙規模?
安村主任まあ、スケールはともかくとして、あちこちでコンピュータが使えたり、ネットが使えたりするのがユビキタス環境ですね。もともとは、ラテン語のubiqueで神はあらゆるところにあらせられるというのから来てます。
水田課長そーか、そーか。じゃあ、あちこちの飲み会に出没するオレもユビキタスだな。
安村主任それは、課長自身が動いているわけだから、ユビキタスというよりモバイルに近いんじゃないですかね。
水田課長はあ?
中山由美例えば、今、ほとんどどこでも携帯電話が使えますが、これは基地局があちこちににあって、つまり遍在していて、電波をつかまえているからですよね。一方、携帯電話機そのものはモバイルです。
水田課長そうか。あちこちにある飲み屋がユビキタスで、うろうろしているオレは、モバイルちゅうこっちゃナ。
ところで、なんで急にユビキタスがはやりだしたん?
安村主任ユビキタスコンピューティングという言葉自体は15年前くらいからあったんですよ。もともとは米国Xerox社のパロアルト研究所のマーク・ワイザー氏が提唱した概念です。
最近注目を浴びているのは、やっぱり、携帯電話や無線LANの普及でどこでもネットにつながるとか、ICチップの発達で何にでもコンピュータがくっつくとか急速にユビキタス環境が現実になってきたからでしょうね。
もっとも、これはITの世界の話で、認知工学の世界などではもっと前からユビキタスという言葉がありました。例えば、人間が空間認知をするときに周りに見えるいろいろなものを見て認知するわけですが、その一つ一つのものがユビキタスというわけです。
水田課長グゥー・・・・・
安村主任あ、寝ちまったよ。ちょっと話が長くなるとすぐこれだもんね。
これじゃあ、ユビキタスじゃなくて、イビキ出すだな。これ、起きなさい。
水田課長し、失礼。 ところで、ユビキタス、ユビキタスって騒いでるのは日本だけって聞いたことあるけど。
安村主任日本だけというより、日本が進んでいると考えるべきなんじゃないですかね。確かに、アメリカなどではUbiquitoisと同じくらいPervasiveという言葉が使われているようですね。
水田課長Pervasiveなんて聞いたことないな。
中山由美そうでしょうね。それぞれ似た概念の言葉ではありますが微妙にニュアンスは違います。
水田課長日本では、はやらない言葉だな。
中山由美言い切ってますね。 何を根拠に?
水田課長言葉の響きが悪いんだよ。濁音、半濁音だらけで。
安村主任よく聞き違いをする課長からそういう音声的な分析が出てくるとは意外ですね。
中山由美そういえば、この話も課長の電車の中の聞き違いから始まったんですよね。
水田課長そうそう! こないだ電車の中でもう一つ変なアナウンスがあった。
安村主任何ですか?
水田課長「橋本にご注意ください」って言うんだ。橋本さんが聞いたら気を悪くしそうじゃん。しかも、橋本って呼び捨てだぜ。
安村主任「足元にご注意ください」でしょう。やれやれ、今年もしょーもない聞き違いでしめくくりですか。
水田課長今年はだじゃれブームだったから、来年は聞き違いブームになるな。
安村主任ならん、ならん。
つづく